黒髪の悪魔

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仕事場までは5分もない。 「おはようございます、櫻井さん。」 「おはようございます」 受付の婦警が笑顔で挨拶をするが笑顔で返すのも億劫なのでしない。  毎日来る職場では比較的素に近い状態でいるようにしているからだ。  愛想笑いなど滅多にしないが、周りはもうそれに慣れている。  始めの頃は普通にしていたが、あまりに外見に群がられてしまい、面倒になった。  「おはようございます」 「おー櫻井。来た来た」 男性率100%の鑑識課。  入るなり、机でいびきをかく者もおり、寝ないためか疲れのためかタバコを吸う者もおり、室内は煙で視界が悪い。 俺もタバコを吸うが、ここまで酷いのは今まで見たことがない。 「秀~こっち~」 仮眠用にされている元応接室のソファーに寝転がったまま、筑紫さんが手を振った。 「また俺の制服を布団代わりにしましたね…」 「お前のサイズはデカイからちょうどいいんだよ」 現場に着用する鑑識課のジャケットには、名前が刺繍されているのですぐわかる。 
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