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「はじめまして、櫻井秀一さん。捜査一課より追い出されました、今井です。」
今井は笑顔で言った。
おそらくジャケットの刺繍を見たのか、筑紫さんが名前を教えたのだろう。
皮肉めいた冗談といい、筑紫さんが好きそうなタイプだ。
俺もブラックジョークに抵抗はないが、仕事中にいちいち気にする気はない。
「今日からしばらく組むことになる。岡本さんからどこまで聞いている?」
「櫻井秀一という男と組ませる、明日は定時より遅くこい。だけですね」
「……………。」
「来ればわかるって言いたかったんじゃねぇの?あの人もよくわかんねぇからなぁ」
それにしてもいい加減である。
「捜査一課にいたということは、建物の案内なんかは必要ないな」
捜査一課は一つ上の階だ。
「いえ、この署に来ることはあまりなかったもので」
「そういや、あんまり見たことねぇよな。こんだけ男前なら女達がキャーキャーわめくだろうし」
確かに捜査一課とはよく仕事をするが、見た覚えがない。
これだけ強烈な外見と中身なら、なかなか忘れないはずなのに。
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