黒髪の悪魔

13/91
前へ
/277ページ
次へ
「はじめまして、櫻井秀一さん。捜査一課より追い出されました、今井です。」 今井は笑顔で言った。  おそらくジャケットの刺繍を見たのか、筑紫さんが名前を教えたのだろう。  皮肉めいた冗談といい、筑紫さんが好きそうなタイプだ。  俺もブラックジョークに抵抗はないが、仕事中にいちいち気にする気はない。 「今日からしばらく組むことになる。岡本さんからどこまで聞いている?」 「櫻井秀一という男と組ませる、明日は定時より遅くこい。だけですね」  「……………。」 「来ればわかるって言いたかったんじゃねぇの?あの人もよくわかんねぇからなぁ」 それにしてもいい加減である。  「捜査一課にいたということは、建物の案内なんかは必要ないな」 捜査一課は一つ上の階だ。  「いえ、この署に来ることはあまりなかったもので」 「そういや、あんまり見たことねぇよな。こんだけ男前なら女達がキャーキャーわめくだろうし」 確かに捜査一課とはよく仕事をするが、見た覚えがない。 これだけ強烈な外見と中身なら、なかなか忘れないはずなのに。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3165人が本棚に入れています
本棚に追加