黒髪の悪魔

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「こうなるから嫌だったんだ…」 「そんなことおっしゃいますがね、案内してくれたのはトイレとロッカーだけじゃないですか」 「珍獣を連れてあれ以上歩くなど不可能だ」 「慣れていらっしゃるでしょう」 「慣れと不快感を感じるのは別問題だ。自分だって完全無視していただろ」 「私は興味がないものは、視界に入ろうともただの風景にしか見えないのです。」 「そこまで超越できて羨ましい限りだ」 「そんなこと………微塵も思っていらっしゃらないくせに。」 俺が振り返ると、今井は微笑みながらタバコをくわえていた。 先程署内を案内していた時は、どんな好奇の目にさらされても完全に無表情だったくせに。 「今日はどちらへ?」 「被害者宅の再検証。」 必要な機材を倉庫で用意していると、今井が言った。 「資料は?」 「パソコンの俺の共有フォルダ内に入れてある。当分一緒に動く案件は入れておいた。今日1日で目を通しておいてくれ」 今井用のフォルダを昨夜残業して作っておいた。 頭は悪くないらしいから、1日デスクにいれば大体わかるだろう。 今井にそう言い残し、俺は機材を抱え、倉庫を出た。 車のキーと、ジャケットを掴み、駐車場へ向かう。
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