3165人が本棚に入れています
本棚に追加
「こうなるから嫌だったんだ…」
「そんなことおっしゃいますがね、案内してくれたのはトイレとロッカーだけじゃないですか」
「珍獣を連れてあれ以上歩くなど不可能だ」
「慣れていらっしゃるでしょう」
「慣れと不快感を感じるのは別問題だ。自分だって完全無視していただろ」
「私は興味がないものは、視界に入ろうともただの風景にしか見えないのです。」
「そこまで超越できて羨ましい限りだ」
「そんなこと………微塵も思っていらっしゃらないくせに。」
俺が振り返ると、今井は微笑みながらタバコをくわえていた。
先程署内を案内していた時は、どんな好奇の目にさらされても完全に無表情だったくせに。
「今日はどちらへ?」
「被害者宅の再検証。」
必要な機材を倉庫で用意していると、今井が言った。
「資料は?」
「パソコンの俺の共有フォルダ内に入れてある。当分一緒に動く案件は入れておいた。今日1日で目を通しておいてくれ」
今井用のフォルダを昨夜残業して作っておいた。
頭は悪くないらしいから、1日デスクにいれば大体わかるだろう。
今井にそう言い残し、俺は機材を抱え、倉庫を出た。
車のキーと、ジャケットを掴み、駐車場へ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!