黒髪の悪魔

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荷物を後部座席に固定し、運転席のドアに手をかけると、ジャケットを手にした今井が視界に入った。 タバコ片手ににっこり笑い、助手席のドアを平然と開けた。 「何をしている」 「車のドアを明けて、右足から乗ろうとしていますが」 「お決まりの冗談を聞いているわけじゃない」 「せっかちな方ですね。」 「急いでいるからな」 運転席に乗り込み、エンジンをかける。 今井も助手席に座り、シートベルトを着けている。 もはや何を言っても付いてくるに間違いない。 今更何か言って止めるくらいなら、最初からしないだろう。 そんな奴のような気がする。 「貴方の残業の賜物も、きちんと読ませていただきますから。」 そう言って、今井は携帯電話を取り出した。 「携帯に転送するようにしておいたので、移動していても読めます。」 「勝手なデータ持ち出しか」 初日からふてぶてしい男だ。
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