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「今井、今から現場入るけど行くか?」
筑紫さんが倉庫から顔をだす。
熊のような、しかし妙に愛嬌のある顔。
「行きます。」
「おっしゃー、俺の勇姿を見せてやるぞ後輩よ。」
鑑識の勇姿とはまた地味なものだが。
しかし、ここ数日は櫻井さんの仕事しか見ていないので、見ておきたい。
「それじゃ車だしといてくれー」
「わかりました。」
「デカイ車にしてくれよー。」
私は片手を上げて了承を伝えた。
この署では車は共同で使用している為、空いているものは先着順。
皆それぞれ好みがあるようだが、私は喫煙車であればなんでも構わない。
「鑑識の今井ですが、車をお借りできますか」
受付が車を管理している為、一々受付に鍵をもらわなくてはならない。
「ご希望はありますか?」
「大きめのがあれば」
「あら、今日は櫻井さんは?」
受付の女が首をかしげた。
「あ、すみません。その希望はいつも筑紫さんがおっしゃられるからつい。」
「いえ、合っていますよ。今日は筑紫さんと同行なんです。」
「そうですか。櫻井さんとは違う日もありますよね。」
彼女は苦笑した。 毎日配車の手配をしているのだから、署内に詳しいのだろう。
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