黒髪の悪魔

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「櫻井さんもいつも希望をおっしゃられるのですか?」 「ええ。以前は特になかったんですけどね。ここ数日は喫煙車を希望されていましたよ。」 「…喫煙車ですか」 「タバコ吸う姿は見たことないんですけどね。かっこいいから絵にはなると思うんだけど」 そう言って彼女は頬を染めながら鍵を渡してくれた。  たった数日だが、私も彼がタバコを吸う姿は見た事がない。  「なんだ、今井ちゃん。えらい気持ち悪い顔して」 「なんでもありません。」 荷物を抱えた筑紫さんがやってきた。  「筑紫さん」 「ん?なんだ。早く車開けてくれよ」 ドアを開けると、筑紫さんはテキパキと後部座席に荷物を固定した。
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