黒髪の悪魔

4/91
前へ
/277ページ
次へ
「明日捜査一課から異動になる話は聞いているか」 「はい。正式な発表がなかったので、あくまで噂の範囲ですが」  捜査第一課から鑑識に異動など、異例中の異例だ。  噂は何日も前から広がっている。  しかし、詳細が一切わからないまま。  異例な人事だけに、皆下手に騒げないのだ。  「その今井なんだが、しばらくお前に預けることにした。」 事後承諾か。 俺はこの課では位置的に後輩を育てていく年齢となった。 しかしこの外見と性格故か、教育係には全く向いていないことは自覚している。 鑑識を希望したのも、他の課より個人行動が多いからに他ならない。 人付き合いが嫌いなわけではないが、そんな時間があれば家に帰る。 妹が家を出る出ないともめている時期なだけに、最近は余計に帰宅が早くなる。 同僚と過ごす余分な時間も、後輩の面倒をみる時間も、正直今は億劫なだけ。 「そう思いっきり嫌な顔をするなよ。」 「この時期に異動ということは、何か問題があるんでしょう?」 「なに、些細なものだ。」 認識には個人差があるということをわかってもらいたいのだが。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3165人が本棚に入れています
本棚に追加