黒髪の悪魔

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「秀、岡本さんなんだって?」 席に戻ると、隣から筑紫さんが話し掛けてきた。 筑紫さんは俺の先輩にあたる、36歳。 あっさりとした明るい性格で、部内では一番話しやすい人だ。 ただ、明るすぎてたまに疲れる。 「明日から異動の新人を連れていけとのことです。」 「ババひいたなぁ。問題児のたらい回しだろ」 岡本さんと違って、筑紫さんはストレートだ。 「この時期の異例の人事ですからね。何かないわけはないでしょうが」 「お人好しな岡本さんがまた拾ったんだな。しっかし、毎回続かねぇよなぁ。」 「岡本さん曰く、今回は自ら選んだらしいですよ」 「毎回そう言ってんじゃねーかよ。アホだなぁ」 そういう筑紫さんの表情は楽しそうだ。 「交通課の情報だと、えらい男前らしいぜ。」 「美人でなくて残念ですね」 筑紫さんはかなりの面食いで、女性は口説かなくては失礼だというのが口癖。 ちなみに美人の奥さんと、奥さん似の小学生の娘がいる。 「美人なら男女気にしないぞ俺は。」 そりゃ食わず嫌いがなくて立派なことで。 俺は書類に視線を戻した。
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