黒髪の悪魔

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「趣味の良い車ですね」  車を降りるなり、今井が目を輝かせている。  はた目には普通に見えるだろうが、何年も毎日顔を合わせていると微妙な表情の変化もわかるようになった。  幸か不幸かはわからんが。 「車買い替えましょうかね」 「お前、こないだバイク買い替えたばっかだろ…」 普通の女と違って洋服や化粧品に費やさない分、今井はやたら車とバイクに金を使う。  趣味はそれぐらいだから構わないと思うが、後先考えずやるもんだから、たまにはブレーキをかけなくてはならない。 「妹さんの旦那様は、趣味がいいみたいですね。お会いするのが楽しみです。」 「……………」 「どうかされましたか?」 「いや、お前を連れてきたのは間違いだったかもしれんと思って…」 「旦那様と気が合うと貴方には不利でしょうしね。」 「……………」 そんなことになったら、確かに恐ろしい。 だがなくはない。 古谷さんは間違いなく今井を気に入るだろうし、佐野さんはともかく、田村さんとは車の趣味が本当に合いそうだ。 そもそも今日は、初花がどうしても来てほしいと言うから来たが、なんだか嫌な予感がする。 だいたい、今まで一度たりとも妹に会いたいとも言わなかった今井が、今回に限ってついてくるのも不思議だった。
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