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「手加減…」
「しましたよ。」
したんだろうが、裕美は呆然と右手を押さえたまま立ち尽くしていた。
「折ってないだろうな」
「貴方の友人相手にそんなことはしません。片手の神経を麻痺させただけです」
「ええっ!?俺の手!?」
「大丈夫だ。時間がたてば元に戻る。」
「あ、そうなんや。じゃあええけど」
いいのか…。
本当に中身は変わっていない。
「せやかて顔に触っただけでそないに照れんでも」
「照れたわけじゃありません。櫻井さん以外に触らせる所はないだけのこと。」
「誤解を呼ぶ発言を自らするな…」
案の定、裕美は先程の痛がっていた顔はどこへやら。
物凄い形相で俺にしがみついてきた。
「なんでや!!俺がおらへん間に皆ゲイになってしもたんか!?嘘やぁ~」
「誰がゲイだ!!」
「あんなにゲイを嫌っとった秀一さんまで…菜々さんに毒されたんか!戻ってきてーな!」
「違う!おい、今井!」
今井を見ると、タバコを吸いながら微笑んで俺達を眺めていた。
「絶対脱ぐなと言われたので脱ぎませんよ」
「脱げなんて言ってないだろ」
「ぬっ、ぬ、ぬ、ぬ、脱げだなんて!!秀一さぁぁぁぁん!!」
「説明!今井、説明!」
今井は俺達に近づいてくると、煙を裕美の耳元にゆっくり吹き掛けて、言った。
「私、実は女なの。」
いつもより低い声で。
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