黒髪の悪魔

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「お兄ちゃん」 俺の顔を見て、初花が微笑む。  白いワンピースにパステルピンクのストール姿の妹は、会うたびに綺麗になっていた。  非常に気に入らないが、田村さんと結婚してから妹は綺麗になった。  外見だけではない。  精神的に満ちているということだと思う。  今までにはない、優しい柔らかい表情で笑う妹は、なによりも綺麗だ。  「初花ちゃーん!」 「裕美ちゃん!?」 俺の気分を、耳の真横で台無しにする大声。  今井が神経を麻痺させていなければ、すぐにでも手を離してやりたい。  麻痺していない方の手を力一杯振りながら、裕美はひたすら初花を呼び続ける。  「初花ちゃーん!めっちゃホットなお姉様になってるー!」 「裕美ちゃんこそ!おっきくなったね。ビックリしちゃった。」 初花が裕美の頭を軽く撫でた。 
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