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景色が薄くなっていく。
樹も、後ろ姿も、香りも、熱も。
終わるんだ、夢が。
また現実に呼ばれて。
幅と、奥行きと、高さの世界に。
意識が脳に閉じ込められて。
落ちて、繋がる。
夢でもらった記憶が次々と弾ける。
そうか。
彼女の名前を思い出した。言葉は殻の方に残していたんだ。
覚醒と共に呟く。
夢を食べるというその生き物の名を。
彼女はあの時――。
「『バク』と言ったのか……」
目覚まし時計が鳴り響く現実。
いつも通りの朝。
起きて学校にいかなくちゃ。
それなのに。
何故か虚しい気持ちに満たされて、まだ目覚めたばかりだというのに涙が流れた。
全ては夢の中のこと。
何も失ってなどいないはずなのに。
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