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   猫が虹の上を歩いている。  その瞬間、世界に溶けて『ひとつ』になる感覚。もしくは、『空っぽ』。  逆さまの錠。裏返しの殻。束縛するものは、何もない。  ――ここは夢の中だ。  そう、気づくことは当たり前になっていた。  最近では、少しずつだけれど、夢でもらった記憶を現実にも持ち出せるようになってきている。  ――さあ、今日はどこへ行こうか。  気付いてしまえば、ここは自由。何でもアリの世界だから。  フワリと浮いて、あの猫の後ろについていこうか。それとも、虹で絵を描くか……ああ、懐かしい建物が見える。扉だって、足元にあるから大丈夫。地球と競争しよう。それとも――。 「あなたは『気付いている』のね」  そんな、いろいろ考えているところに、後ろから声をかけられたものだから、僕は、危うく現実に落っこちるところだった。  ――誰なの?  振り向いたら髪の長い女の人。恰好がなんだか変な気がするのは、気のせいかな? 「私は――」  女の人が言ったのは、多分名前なんだろうな。聞いたことはあるけれど、思い出せない。夢の香り。 「案内したい場所があるの」  そう言って、女の人がフワリと浮いた。  
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