152人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは夢の中だから。
僕もフワリと浮ける。
「ついてきて」
僕はためらわない。
スルスルと飛んで行く女の人についていく。
現実なら絶対ためらうけどね。
ここが夢の中である以上、この人もきっと、僕の頭が生み出した夢――。
「それは、ある意味では正しいけれど、間違っているわ」
女の人が振り向いている。いつの間に。心臓に悪いなあ。
――それって、どういうこと?
黒い目が僕を捉えて、吸い込まれそう。
「夢は、完全なオフラインじゃないってこと」
――よくわからないけど……君は、僕じゃないの?
「君の現実の定義で言えば、ね」
――僕の現実?
「次元の話よ」
ジゲン? ジゲンって、なんだっけ?
それも聞いたことのある単語だけれど。
思い出す前に、女の人はまた飛んで行ってしまう。
――待って。ジゲンってなんなのさ。
後ろ姿に問いかける。
なびく黒い髪からはまた、夢の香り。
最初のコメントを投稿しよう!