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裏側はそれなりに広い庭のような所だった。その庭の真ん中辺りにポツンと犬小屋とその周辺で木の杭で紐に繋がれた一匹の柴犬がやってきた秋に嬉しそうに尻尾をブンブン振っていた。
秋はその柴犬に笑いながら近づき、しゃがんで頭を撫でた。
「おはよう、太一(たいち)」
太一と呼ばれた柴犬はハッハッと息を漏らしながら彼女の顔をペロペロ舐めた。
それを宿の壁に隠れていた亮介は太一に舐められてくすぐったそうにしている秋を見てると微笑ましくなった。そして気付けば彼は彼女に声をかけていた。
「よっ」
「わひゃあ!?」
だがもはや当然と言うべきか、いきなり声をかけられた彼女はまるで痴漢にでもあったように声をあげるとササッと犬小屋の裏に隠れてしまった。太一も彼女を追いかけて犬小屋の裏に回った。
彼女は犬小屋の裏から顔を出して誰か見て亮介だったことに何故かホッと安堵したように一息ついて犬小屋の裏から出てきた。
「り、亮介さん…」
「ご、ごめん…。驚かすつもりは無かったんだけど…」
亮介は申し訳ない表情で頭を軽くかいた。
「い、いえ…。こちらこそいきなり大きな声を出してしまってごめんなさい…」
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