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「ま、まぁ…何かもう慣れたからいいよ」
苦笑しながら答えて亮介は秋の足元に座っている太一を指差す。
「その犬…ペットか?」
「はい。た太一って言います」
「太一か。なんかどっかで聞いたような名前だけど、まあいいや。触ってもいいかな?」
「は、はい。そそれは構わないんですが…」
何故か少し慌てた感じで答える秋に不思議に思いながら亮介は何やら警戒しているような姿勢を見せる太一に何気なく近づいて頭を撫でようと右手を差し出す。が…。
「ガウッ!」
と低い音程でそう鳴いてガブリと差し出した手に噛みついてきた。鋭い歯が手の肉に容赦なく刺さり、何とも言えない痛みが走った。そりゃまあ、犬に噛みつかれると痛いものだ。
「痛ってぇっ!!」
彼はすぐに手を引き抜こうとしたが、これがどうにも太一は力強く噛みついているのでなかなか離れない。
「や、やっぱりぃ…」
秋があわあわと慌てながらそう呟いたところでようやく太一の口から手が離れた亮介は痛そうに手を押さえた。秋はすぐさま彼に向かって何回も頭を下げる。
「ごめんなさい! ごめんなさい! た、太一は私の家族と西山さん達以外には全くなつこうとしなくて…初対面の人でも容赦なく噛みついちゃうんです。ほ、本当にごめんなさいっ」
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