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「そ、そっか…。なら納得がいくよ」
痛みを堪えながらも笑顔を見せる彼に秋は余計に心配になった。
「だ、大丈夫ですか…?」
思わず彼女は亮介に近づき、手をとって心配そうに傷を見た。
太一は相当強く噛んでいたのだろう。亮介の手にはクッキリと太一の歯形が残っており、そこから少しずつではあるが血が滲み出ていた。
「だ、大丈夫。このくらいは平気だから…」
突然女の子に手をとられていることに少々うろたえながら亮介は平気そうに笑顔を浮かべる。
「だ、駄目です。ちゃんと手当てしないと…」
だが彼女はそう言うとすぐに宿に戻り、しばらくして救急箱を持ってきた。その後テキパキと手馴れた手つきで彼の傷の手当てをしていった。
「これで良しと…」
気付けば噛まれた右手にはいつの間にか包帯が綺麗に巻いてあることに驚きながら亮介は彼女に感謝の気持ちと共に微笑みかけた。
「えっと、ありがとな」
そんな彼の微笑みを見た彼女は途端にいつものように恥ずかしくなって顔を赤くさせながらぎこちなく救急箱をしまいに言った。
また少しして戻ってきた彼女は気を取り直してそのまま太一の下へ向かうと太一の首の紐をほどき、先程持っていた紐らしき物を代わりにつけた。近くで見て、どうやらリードのようだ。
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