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「じ、じゃあ…私は太一の散歩に行きますので…その、亮介さんは部屋で休んでいてください…」
秋はボソボソとしながら言うと太一にちょっと引っ張られるような形で進みだす。そこで亮介はふと言った。
「いや、俺も…その、一緒にいいか?」
秋はそれを聞くと不思議そうに彼に振り返った。
「へ……?」
今まで一人でしか太一の散歩に行ってなかった彼女は彼の言葉にどう答えればいいか分からず困惑する。
「ほら、今更また部屋で休むのも何だし、せっかくたからちょっと話がしてみたいんだ。秋のこととか知りたいからさ」
彼はちょっぴり恥ずかしそうに笑いながら言った。秋はそんな彼の言葉に少しだけ嬉しくなり、不意に笑顔を浮かべながらもぎこちなく答えた。
「わ、私なんかと話しても面白くないと思いますけど…そ、そう言うなら是非…一緒に…」
後半辺りは恥ずかしくなってきたのか声がゴニョゴニョとして聞こえなかったがとりあえずOKということみたいなので亮介は流石に浴衣で行く訳にはいかず、宿の部屋に戻り、私服に着替えて(美香のこともあるので隠れながら)秋と一緒に太一の散歩に出かけた。
それにしても、さっきから太一がかなり嫌そうな顔で亮介を見ているような気がするが、気のせいだろう。きっとそうだ。
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