水鏡の旅立ち

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玄関に着くと、弟はリュックを下ろし、中の物を身に着け始めた。 古いベルトを締め、水鉄砲をそこに挟む。プラスチックの剣も同じように腰から下げた。 風呂敷はくるりとマントの様に背中にたらし、軍手をはめ、鍋の蓋を左手に持つ。 その姿はまるっきり御伽噺の騎士を真似た、可笑しな姿だったけれど、本人は至って真剣な顔をしていたから、私は噴出しそうに成るのを懸命にこらえた。 着替え終わった弟は無言で私をみつめた。暗に私も同じ真似をしろということらしい。 恥ずかしかったけれど、どうせこんな夜中だ。人通りも少ないだろうし、見られても暗闇で見えにくいだろう。 私はとりあえずネックレスをつけ、フードつきのパーカーを羽織った。そのフードに竜の人形を入れ、右手にピコピコハンマー、左手に犬のぬいぐるみを持つ。 そのまま、私たちは外へ出た。 、
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