水鏡の旅立ち

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私がその月に見惚れている間に、弟は私から手を離して玄関に備え付けられた水道に近づいていった。 蛇口を捻ってホースを私からも弟からも離れた地面に向ける。 水は綺麗な弧を描いてアスファルトに着水した。 あっという間に水溜りが広がる。 「今日、十歳になったんだ」 二人で水溜りに近づくと、弟が突然、呟いた。 朝におめでとうといい、プレゼントを渡したが、一応今も「うん、おめでとう」と言った。 「ようやく十歳になれたんだ」 「…?うん」 「すっと待ってたんだ。これで――――…、これでようやく、帰れる」 「…え?」 、
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