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「何してるの」
そこで私にようやく気付いたらしい。そこまで夢中になるほど、泥棒もどきの行為が楽しいのだろうか。
「おかえり」
私の質問には答えず、そのままへにゃっと笑って言った。とりあえず、私も一応「ただいま」と言ってから、もう一度尋ねてみた。
「何してるの」
「探し物してんだ」
「…」
とりあえず、ぺちんと弟のおでこを叩いた。イテ、と呟いた弟を無視して、落ちているミニカーを拾い集める。
おもちゃ箱でなく、部屋はすさまじい有様だった。
洋服ダンスからは服が出されて畳まれもせずに出しっぱなしになっているし、クローゼットの中はここだけ台風がきたのかと思うほどだ。
そして家中見てきた私は知っている。どの部屋も皆、似たり寄ったりの状態であると。
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