水鏡の旅立ち

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「お父さんとお母さんに怒られるからやめて」 そう言いながら弟のほうを見て気付く。彼は手にリュックサックを持っていた。 青と赤のおそろいのリュックサック。青が弟ので、赤が私のだ。 青色のリュックからは何故か、紫色のどうみても風呂敷らしい布がのぞいている。 どちらのリュックも何を入れたのだろう、適度に膨らんでいる。 「何探してるの。あたしも一緒に探すから、やめて」 「あった」 そう言って弟が取り出したのは、見たことがないぶ厚くて古そうな黒い本だった。 彼はそれを大事そうに自分のリュックに入れると、赤いリュックを私に渡した。 「片付けなくていいから」 「怒られるよ」 「大丈夫だから」 、
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