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間違えようのない敵意がする方へ目をやると、遠くに黒いモノが見える。
ダンテスは自分から動き出そうとはしなかったが、それを見抜いたのか黒いモノはダンテスへと近付いて、遠近法に従い徐々に大きさとその姿を現してきた。
黒いモノの正体、それはダンテスの数十倍はあろう重々しい扉だった。
その扉の前に声の主が待ちくたびれたように座っていた。
だが声の主は半透明な存在で、全身が透けている。まるで影が立体化した様な姿だが、外見から想像もできないプレッシャーがダンテスの行動を二手も三手も遅らせた。
『来ない様だから来たよ。』
「………詳しく教えろ、ここはどこで貴様は誰だ!」
『理解できないだろうけど、ここは光の中で僕は誰でもない。』
「ならば質問を変えよう、貴様はここで何をしている。」
『通行人から通行料をもらってるんだよ。』
「………」
『止めな、ここに壊れるモノは何もないよ。僕もね。』
「………通行料は何だ。」
『これから決める。』
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