迫り来る混沌

2/8
前へ
/53ページ
次へ
赤い空に出来た黒い穴は次第にその勢力を増し、片っ端から全てを飲み込もうとしている。 そんな中、廃城では魔王の最後の一撃が動き出していた。 廃城の壁から魔法陣が浮かび上がり、その周りには、最後の一撃で傷口から飛んだ勇者の血と、魔王が衝撃と同時に飛ばした血が微かに付いていた。 うごめく血液が徐々に集まり、形を成していく。 手のひら程の体、指の様な手足、これらは段々と膨らみ人間の子供くらいの大きさで止まり、液体から個体へと変貌を遂げた。 遂に人間らしく変貌を終えたこのモノに、魔王から与えられたメッセージが魔法陣に残っていた。 『新しく生まれ落ちたモノよ、お前は人間でも魔族でもない。 だが、お前は魔王である私が全てを託した息子だ。 名前を《ダンテス》と名付けよう。 お前には何よりも強い体と、何よりも強い精神を作っておいた。 だからいつか、その力をもって私の前に来てはくれまいか。 そして、私に答えを教えてくれ。 約束が果たされるその日まで、この石の中で全てを捨てて待とう。 頼んだぞ、ダンテス。』
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加