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それからの数日間、アタシは何一つ、まともには手につかなかった。
廃人みたいだった。
「シバタ君と一番仲良しだった咲季ちゃんに、お葬式の時に送る言葉を言って欲しいの」
と、桜井先生は言ったけれど、アタシはキッパリと断った。
お葬式なんか行ったら、送る言葉なんか言ったら、シバタが死んだのが本当になりそうで嫌だったから。
「お葬式には行きません」毅然とした態度で言うアタシを、桜井先生がまるで捨て犬でも見るような目で見たって、アタシはちっとも構わなかった。
学校は休まなかったけれど、校庭の隅の花壇の端に座っていることが多くなった。
時折、シバタの気配を感じながら。
桜井先生は、ママを呼び出したようだった。
「桜井先生も、咲季を心配しているのよ」
それ以外、ママは何も言わなかった。
何も言わずに、ただそっと寄り添ってくれた。
丁度いい距離感と包み込むような空気で。
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