学校

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この学校で話せるヤツは、シバタだけ。 男の子達の間で、シバタはオカマとか言われていたけど、そういう事を大勢で言う奴らの方がよっぽど男らしくないと思う。女々しいし、子供っぽいと思う。 だって、シバタには、ちゃんと筋が通っているんだもの。 花が好きで、ピンクが好きで、絵を描くのが好きで、乱暴な言葉遣いが嫌いで、お菓子作りが得意。 グループ行動が好きな女の子達との行動もまた、アタシは苦手だったから、大抵はシバタと、それ以外は一人でいた。 一人になりたくなると、校庭の隅にある花壇の端に腰掛けて空を見上げた。 時々一人でいるアタシを、担任の桜井先生(四十歳独身)は心配したけれども、アタシが好きでしているんだから、取り越し苦労だと思う。 ざわざわとした耳障りな声から解放されて、木々のざわめきや風の中に身を置くと、すぅ~とするんだもの。 「勉強の方は問題ありませんが、集団生活が苦手なようで個別行動を取るところが見受けられます」 家庭訪問の時、こっそり聞いた桜井先生の言葉。 「まあ、咲季は大物だわ」クスクスと笑いながら、そう応えたママ。 その言葉を聞いた桜井先生の顔を思い浮かべ、アタシは必死で笑いをこらえた。 外見はもの凄く女らしいママ。色だって真っ白で、折れそうな細い身体は、しなやかに動く。それに、料理だって、ほとんど天才的だ。 だけど、ちょっとやそっとの事では動じないのは、大抵の男の人より、うんと男らしいと思う。 「ママは咲季のママでもあり、パパでもあり、親友でもあるのよ」 ママが、時折口にする台詞。幸せそうに、そして誇らしげに。
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