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千夏の涙が、今にもこぼれ落ちそうだった。
オレはどうやって彼女を慰めていいのか分からなかった。
千夏がどうして悲しんでいるのか…それすらも、分かってあげられなかった。
男には“女の気持ち”ってやつは、本当に分からないものなのかもしれない。
こういう時、オレが千夏の彼氏だったら抱きしめてあげられるのに。
側にいてあげてもいいのか?
それとも、一人にしてあげた方がいいのか?
オレはどうすることもできないまま、その場に立ちすくんだ。
「私…高倉君と別れたの」
「えっ?!義彦とつき合ってたのかよ?!」
「えっ…知らなかった?翔平と高倉君、仲がいいから知ってると思ってた」
義彦の奴、オレに相談もしねぇで…。
まぁこの際、その話しは置いておこう。
「高倉君、すごく言いにくいような顔をして『別れよう』って」
「原因は何だよ」
「高倉君、忙しくてあまり会える時間がないからって…」
「そんな理由で…」
最後まで言う前に、千夏が遮った。
「それ以上言わないで。高倉君優しい人だから、私と会う時間を作ってくれてたんだと思う。分かってるんだけど…」
夜の静かな公園に千夏の泣き声が、響き渡った。
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