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森の中にある寺…。
その寺には二人の法師がいた。
一人は黒の法衣を着た法師、一京、もう一人は青の法衣を着ている琵琶法師、番京である。
番京は笠(かさ)を被り、今まさに寺から出ようとしていた。
「じゃあな、一京。元気でな。オレはしばらく帰ってこないが、一人でやっていけるな?」
「はい。私は大丈夫ですから、兄上は体調管理に気を付けて下さい。」
番京の問いに一京は笑いながら答えた。
しっかりとした弟の態度に番京は一京の額を軽く押した。
「たくっ。本当にデキた弟だな。普通は立場が逆なのにな。」
「何言っているんですか。兄上は私には持ってないものを沢山持っているんですよ?それだけで充分です。」
「…サンキュ。」
一京の言葉に番京は小さく笑った。
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