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なんだか私は嬉しくなった。
これは私と彼の愛の証。
「とりあえず傷口は塞ごう」というお医者さんの提案は勿論パス。
だって胸から手を突っ込んで愛に触れられるなんて、こんなに幸せなことないじゃない。
「にしてもどうして心臓が飛び出たんだい?」というお医者さんの疑問も軽く流して私はスキップで彼と出会った沼までお散歩。
そして木陰の下、一人でニヤニヤしていた。
一応心臓は持ってきた。
捨てるのはちょっと怖いし勿体ないもん。
私は時々自分の胸に腕を突っ込んでハートのドキドキを直接感じる。
――ああ、幸せ。
もし今また彼に会えたら、私はどうなってしまうんだろう……一目みただけで心臓が飛び出てハートができたんだから、もし彼に耳元で囁かれたら、今度は脳みそが溶けて鼻から鼻血みたいに出てくるんじゃないかしら。
考えるだけでまたハートが強くドキドキしだしたのがわかる。
果てしない私。
はしたない私?
きっと私は今、世界一血行が良い魔女だ。
ふと、木陰以外の影が私に重なる。
見上げると、彼がいた。
手を私に差し延べて、
「こんにちは。今日は包帯してないのかな?」
もう、すごい。ハートが過呼吸を起こして痙攣してるみたい。
身体が熱い。
傷口があったらきっとハートのドキドキに合わせて血が「ピュッ、ピュッ」と吹き出てただろう。
私は幸せだ。
このドキドキが続く限り私は生きられる。
愛と共に生き、愛と共に死ぬ。
私は今、魔法じゃなれない本物のヒロインになれたわけだ。
私は彼の手に右手を伸ばし、
左手で心臓を、ぐちゃっと潰した。
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