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お月様が降ってきた。
ベランダで勉強の休憩がてら空を見ていたら、真っ暗な空から急に月が落ちてきた。
中学三年生。15歳。受験生。
元野球部所属。背番号15。7番打者。ポジション、ライト。
そんな僕にはお月様なんて簡単にキャッチできる。
お月様は思ったより小さかった。
遠くで光る大きなお月様は、実は普段見上げた時の大きさのままだった。
ピンポン球より大きく、ソフトボールより小さい。野球の球くらい。
初めて掴んだお月様はやたら手になじんだ。
宝物にしよう。
そう思った時、月に兎がいることに気付いた。
真っ白な兎が一匹。
僕は驚いた。
だってこんな小さな兎みたことない。
「た、すけて……くださ、い」
しかも喋る。レア。宝物決定。
「どうしたの?」
「息が、苦しいんです」
ホントかな?って思ったけど、兎はホントに苦しそう。目も充血してて、プルプル震えている。
「どうすればいいの?」
「元の場所に、もどして下さい。ここは、空気が薄い。かわりに一つだけ、願いを叶、えてあげますか、ら」
宝物だけど、僕は兎のいうことをきいてあげることにした。
「じゃあ、受験に合格させて」
「ジュケン?はい、ジュケン、に、ゴウカクさせ、ます」
やったラッキー。
僕は助走をつける為に三歩さがる。
「じゃあ、いくよ?」
加速。手慣れた感触。引退したけど鈍ってない……ハズ。
僕はお月様を真っ暗な空に向けて思いっきり投げた。肩が抜けるような放出感。
黄金の軌跡が闇に溶ける。
「レーザービーーーム!」
遠くで硝子の割れる音がした。
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