マンドラゴラ先輩

2/3
前へ
/53ページ
次へ
私の学校には伝説がある。   夕方五時。校庭の右から三番目の大きな草はマンドラゴラ。 抜いた時に叫び声をあげる、人の顔をした根を持つ変な植物。 その声を聞いたものは死ぬんだって。   私はそれを聴きにきた。 時計を確認。 よし。いくか。   右から三番目。大きな草。あった。 私はそれを躊躇なく両手で力いっぱい引っ張る。   つっかえが取れたようにぬるぬると土から引き抜かれる感触。   「アッーーーーー!!!!!!」 響く絶叫。   「……………………あれ?死なない?」   「失礼なヤツだな。そんな変な声じゃねぇだろ」   うわっ、意外に気さく。   渋い顔をしたマンドラゴラが「よいしょ、っと」と、尻餅をつく私の横に座る。   「ふー……やっと出れた。嬢ちゃんが一人目だよ。ありがとな」   なんかオッサン臭い。   「なんで私は死なないの?」   「なんで嬢ちゃんが死ぬんだ?」   私はマンドラゴラに事情を説明する。 「なんと!」と驚いてマンドラゴラはしなしなと落ち込む。   「そんな伝説になってたのか……通りで誰も引き抜いてくれなかったわけだ……」   「……大丈夫?」   「嬢ちゃん……ベーブルースって知ってるか?」   「ベーブルース?」   「伝説の野球選手だ。伝説って言っても実際に存在するヤツさ。 そういうのに俺は憧れてな……そんでこの土に潜ったんだよ。そういう伝説になりたくてさ。叫ぶ植物って面白いだろ?子供に人気でるかなって。だから早めの時間に設定したり」   でも失敗したなぁ~、と呟きマンドラゴラは仰向けに倒れる。   なんとなくそれにならって私も倒れ、空を見上げる。  
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加