388人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、やだ」
ふと渇いた屋上から空へと乱暴に目線をあげる
「僕もうやだ。このままじゃいられない。妬ましい。妬ましい。でも実行力が僕には皆無だ」
ハトは言う
「その感情が長期休暇の必要性なんだ」
大きく胸をはって、愛らしい目、口許
「長期休暇なんてただ何もせずにすごしていたらそこに残るのは倦怠感だけだ。どうせなら有意義に過ごそうではないか。脳に皺を刻むのだ」
そういうと、ハトは身震いしながらバサリと羽を広げた
「君はまだスタートラインにいる。妬みの対象を追い越す力は有り余っているはずじゃないか。」
まるで僕を試すかのような微笑を浮かべ、彼は、透明感の無い油絵の具で塗りつぶされたような水色の空に溶け、やがて、飛行機と重なった
「君が言っても説得力に欠ける」
ほんの少しだけ口許を緩め(それは自分にしかわからない程の頬の筋肉の弛みである)
僕はまた、渇いた屋上へと、視線を落とした
「彼は不思議だ。あんな小さい脳みそで、ずうっと僕より世間を知っているかのような」
「それはとんだ皮肉だね」
どこからか、それはずっと上空からか
苦笑いを含んだハトの声がした。
「皮肉なんかじゃないさ。褒めているんだよ。僕は」
それは実際に波長として鼓膜でうけとめられたものなのか、はたまた脳に語りかけられたのか、それは定かではないが、確かに感じ取ったその言葉に、僕は返事を返した。
しかしその返事の内容にぴったり合致した返信は、結局いつまでたっても受け止めることができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!