本(おくじょう)

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  ガチャガチャと、陶器や金属の擦れる音や、若々しい笑い声、キーボードを打つ静かで小気味よい音など、様々な固有の音色がフロア中に響いている   勿論それは人間にとってあまり心地のよいものではないし、私だって例外じゃない。   「ドリンクバーとミルフィーユを一つ」   呼び鈴を押しお決まりの機械音が流れた後、モニターに表示された番号を確認し早歩きできた店員に、取り敢えずメニューを注文する。   でも、私はここにものを食べにきたわけじゃない。ただ、物語を作りにきた。   ここはファミリーレストラン。そんなのはわかってる。食事をする場所というぐらい、わかる。だけど、それ私に問うのは野暮ってもん。 明るい証明、ソファ、飲み物、トイレ、適度な放置感、深夜営業に加えて、人間観察だってできる。ファミリーレストランって素晴らしいじゃない。漫画喫茶は高いしね。   今から私はこの雑音の中で、ただ瞑想にふける。ううん、妄想といったほうが的確かも。   本を読むふりをして、無印良品で買った文庫本型ノートの白紙のページを睨み続ける。 時たまページをめくるのは、それは私がその見開き2ページに文字を埋め尽くした時。 私は妄想を、妄想で文字に表す。  すぐに運ばれてくる皿まで冷たいミルフィーユに、フォークをつきさしたまま。着色料たっぷりメロンソーダの細かい泡が落ち着いても。   そこには私の居場所がある。テリトリーがある。 そこで私は、にらめっこを開始する。   この本の向こうに見える、 鳩と少年のいる、屋上と。      
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