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寄り添う猫
その温もり、命の温もりで、絵描きは目を醒ました。
『おぅ~…、悪い…無理みたいだ』
絵描きは鉛筆を握り、力強く書き出した。
いつもはサラサラ絵を描く手…今は一字一字、綺麗と呼ぶには程遠い字を…
絵描きは書きながら猫に話した。
優しく、深い、沈んだ瞳。
猫も何かを感じ、黙っていた。
『ホーリー、一年間ありがとぅ…幸せだった』
絵描きは続ける。
最後の言葉…一生で一番重い
゙言葉゙
猫は役目を理解していた。
言葉を、受け取った。
絵描きを目指して家を飛び出したコト
そして、家には帰りを待つ 恋人 が居るコト
伝わるはずが無い言葉を…理解した。
猫は「売れない、不吉な黒猫の絵を描き続けたから、倒れた」と自分を責めた。
罪の意識とともに、熱い何かを感じた猫。
そぅ…恩返しの時
「愛」への恩返し
手紙をくわえ、猫は背を向けた。
絵描きに息が無いのを知っていた。
今は悲しむ時ではない
前に進む時
猫は闇に消えていった。
『ホーリー…』
その背中には、何も変わらない、温かな視線が向けられていた
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