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目を覚ますと、そこには懐かしい天井が見えた。
私、なんでこんなところで寝てるんだろう…
ここは私の部屋じゃない。
客間だ…
「えっ屯所!」
ボーっとしていた頭が冴えると、更なる混乱が舞い込んできた。
ここは何処で、何故自分がこんなところにいるのか…
詩乃は!
はっとして辺りを見回す。
隣には規則正しい寝息を立てる詩乃がいた。
ホッとしたのも束の間、障子がすっと開く。
「あ、起きられてたんですね。女性が寝てるのにご無礼しました。」
沖田が柔らかくわらって見せる。
「そ…うじ…?な…なんで?」
懐かしい名前を口にして、不意に涙が溢れる。
腕を、肩を、顔を、髪を、その感触を確める様に順番にさわる。
「どうされました?」
突然、見知らぬ女性が泣き出し、名前を呼ばれ沖田は混乱した。
ひとしきり泣いて、少し落ち着いた。
そしてふと疑問が生じる。
「これは何時もの夢…じゃないよね。何時もよりリアルだし…」
一人でぶつぶつ言いながら考え込んでると、ぷっと沖田が吹き出した。
「ご…ごめんなさい…なんだか貴女の考え込んでる姿が、土方さんに似てて」
アハハハっと声を上げて笑う。
葵も釣られて笑う。
これは現実だ…
私、あの時代に還ってきたんだ…
急に嬉しくなる。
待ち焦がれていた場所に、私は還ってきたんだ…。
「ねぇ総司…今何年の何月なの?」
どうしても暦がきになった。
もしかすると、時間が無いかもしれない。
「暦…ですか?元治元年の5月ですよ」
元治元年…少しだけホッとする。まだ…生きてる…
「それよりさっきから気になってたんですが…貴女は何故、私の名を知っているんですか?」
言われてはっとする。
私はこの時代の人間ではなかった…と
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