第四章

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「そういえば、アメリカが新型爆弾を開発しているって噂を聞いたぞ。」と、里田は言った。 「新型爆弾?それは、どんな物なんだ?」と、和馬は言った。 「俺も、噂を聞いただけだから良く分からないんだ。なんでも、一度に大勢の人を殺せる様な物らしい。」と、里田は言った。 和馬は、腕組みをした(一度に、大勢の人を殺せる…。普通の爆弾では、ないだろう。一体、どんな物なのだろうか?)と、和馬は考えていた。 「だが、噂だけだぞ。ドイツもアメリカも、そんな新型兵器を開発しているという証拠は無いんだ。」と、里田は言った。 「ああ。しかし、もしもという事が考えられる。注意しよう。」と、和馬は言った。 弥生は、福島の自然の中で穏やかな日々を過ごしていた。大分、畑仕事にも慣れてきていた。空は、何処までも青く澄み渡っていた。 (和馬さん…。どうしているのかしら?元気だと、良いんだけど…。)と、弥生は考えていた。 「弥生。お茶が、入ったよ。一休みしなさい。」と、母の声が聞こえた。「は~い!」と、弥生は言った。 弥生は、縁側に腰を降ろして母が入れてくれたお茶を飲んだ。「東京は、どうなっているのかね~?」と、母は言った。 空襲を、受けている事は知っていた。だが、様子までは分からなかった。 「あの軍人さん。どうしているんだい?お前、手紙を出しているんだろう?」と、母は言った。 「和馬さんの事?あの人は、元気でいるわ。この前も、手紙が来ていたもの。」と、弥生は言った。 「そうかい。なら、良いけどね。早く、戦争が終わらないかね~?やっぱり、東京が恋しいよ。お父さん逹の消息も、分からないままだしね~。」と、母は溜め息をつきながら言った。 弥生の父と兄は、陸軍に配属になったらしかった。最初の頃は、手紙が来ていた。だが、戦争が激しさを増すと手紙も来なくなってしまった。 ここの伯父は、母の兄にあたる。最初は、東京に住んでいたが定年を機に福島へ移り住んだのだ。 弥生逹の疎開も、本当は早くするつもりだったが受け入れる準備に手間が掛かったのだ。 今は、戦時中である。情報も、錯綜していた。報道も、毎日違っていた。何を信じて良いのか、分からなかった。
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