最終章

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最終章

月日は巡り、5月になった。米を始めとする連合軍は、ドイツのベルリンを占領した。 ドイツは、無条件降伏をした。イタリアも、降伏していた。日本は、孤立無援の状態になった。 連合軍は、日本にも無条件降伏を迫った。しかし、日本は応じなかった。連合軍は、沖縄に攻めて来た。 硫黄島、沖縄と次々に陥落した。もう、和馬逹にはどうする事も出来なかった…。 「なあ、僕達は死ぬんだろうか?」と、和馬は呟く様に言った。 「馬鹿野郎!死んで、死んでたまるかよ!田之倉!しっかりしろ!お前には、待ってくれている人がいるだろう!?」と、里田は叫んだ。 「待ってくれている人…。弥生さん…。」と、和馬は呟いた。脳裏に、弥生の笑顔が浮かんだ。 「そうだよ!しっかりしろ!生きるんだよ!」と、里田は言った。 「そうだ!僕には、弥生さんがいるんだ!絶対に、生き延びる!」と、和馬は叫んだ。 「そうだ!その意気だよ!」と、里田は和馬の肩に手を置いて言った。 和馬逹は、仮に造った司令部にいた。軍人で、生き残った者は集まっていた。 「くそっ!何とか、何とか出来んのか!?」と、誰かが言った。皆、苛立っていた。 和馬は、悟っていた。日本は、この戦争に負けるという事を…。だが、そんな事は口に出来なかった。里田も、分かっている様だった。 弥生の所にも、色々な情報が入って来ていた。だが、どれも日本に勝ち目は無いというものだった。 郵便事情も、悪化していた。例え、和馬が弥生に手紙を出してもそれが、届く望みは無かった…。 弥生は、居ても立ってもいられず部屋の中で一人うろうろしていた。母は、そんな弥生を黙って見ていた。 この時、弥生も和馬も知らなかった。アメリカが、悪魔の兵器を造った事。それを、日本に対して使うつもりだという事を…。 月日は、無情に流れていった。運命の日は、刻一刻と近付いていた…。 敵軍は、勢い付いていた。もう、誰にも止める事は出来なかった。沖縄は、アメリカに完全に占領されていた。 沖縄にいた兵士逹は、ほうほうのていで逃げ帰って来た。だが、誰も彼等を責めなかった。 その中には、弥生の父と兄もいた。皆、諦めていた。ただ、陸軍だけは違った。諦めていなかったのである。
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