最終章

2/6
前へ
/27ページ
次へ
「こうなったら、本土決戦だ!」と、息巻いていた。和馬も里田も、もう何も言う気にならなかった。 日本は、負けたという事を自覚していた。「大日本帝国が、負ける筈が無い!」と、陸軍の誰かが叫んだ。 「必ずや、神風が吹いて鬼畜米英を追い払って下さる!」と、叫ぶ者もいた。 段々と、日差しが強くなって季節は夏に近付いていた。弥生は、畑仕事や家事をして気を紛らわそうとしていた。 何かせずには、いられなかったのである。じっとしていると、どうしても和馬の事を考えてしまう。 確実に、運命の日は近付いていた…。8月になった…。 8月6日…。広島に、原子爆弾が投下された。その日、いつもの様に過ごしていた人が町が消えた…。 生き残った人逹も、何が起こったのか理解出来ずにいた。和馬逹の所にも、報せが入った。情報が、錯綜していた。 「一体、何が起こったんだ!?」と、和馬は叫んだ。「分かりません!広島に、アメリカの新型爆弾が投下されたそうです!」と、一人の兵士が言った。 「新型爆弾だって!?まさか!?」と、里田は言った。「あの噂は、本当だったのか!?」と、和馬は言った。里田は、黙って頷いた。 8月9日…。広島に続いて、長崎にも原子爆弾が投下された。広島と、同じだった…。一瞬にして、全てが消えた…。 この報せも、和馬逹の所に入って来た。「アメリカめ!どれだけ、人々を苦しめたら気が済むんだ!?」と、里田が叫んだ。 (もう、終わりだ…。)と、和馬は思った。 8月15日…。日本は、連合軍に対して無条件降伏をした。戦争は、終わった…。 その日、弥生はラジオの前にいた。天皇陛下の、玉音放送が流れた。伯父も伯母も母も、黙って放送を聞いていた。 (これで、戦争が終わったんだ…。)と、弥生は思った。 和馬逹も、放送を聞いていた。床に、平伏す者。すすり泣く者。ただ、呆然とする者。様々だった…。 和馬は、ただ唇を噛み締めていた。里田も、黙って俯いていた。騒いでいた、陸軍の連中も大人しくなった。 日本は、戦争に負けたのだ。それは、紛れもない事実だった。夏の日差しが、照り付けていた…。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加