第一章

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工場の前で、撮った物の様だった。「私が、病弱なので弥生には苦労ばかりさせてしまって…。」と、弥生の母は言った。「お母さん。私なら、良いのよ。」と、弥生は言った。 「弥生さんは、学生さんですか?」と、和馬は言った。「はい。普段は、女学校に通っています。」と、弥生は言った。 最近では、学徒動員もあって学生でも安心は出来なかった。 「昼は、学校。夜は、軍事工場で働いてこの子が家計を支えてくれているんです。本当に、申し訳無くて…。」と、弥生の母は涙を流しながら言った。 「お母さん。私なら、平気よ。」と、弥生は言った。和馬は「それは、さぞ大変でしょう。軍事工場では、何を作っているんですか?」と、言った。 弥生は「主に、落下傘等を作っています。」と、言った。 「では、僕は空軍ですから弥生さんが作った落下傘を使う事があるかもしれませんね。」と、和馬は微笑みながら言った。 「そうですね。そんな事も、あるかもしれませんね。」と、弥生も微笑みながら言った。 「では、僕はそろそろ失礼します。お茶、美味しかったですよ。」と、言って和馬は立ち上がった。 「なら、そこまで御送りします。」と、言って弥生も立ち上がった。二人は、揃って家を出た。 そして、あの小高い丘まで来た。「もう、ここで結構ですよ。」と、和馬は言った。 「そうですか。では、お気をつけて…。」と、言って弥生は帰ろうとした。「あっ!待って!」と、和馬が呼び止めた。 弥生は、振り向くと「何でしょう?」と、言った。「あの…もし、迷惑でなかったら僕とまた会って貰えませんか?」と、和馬は照れる様に言った。 その瞬間、弥生の顔が、ぱぁ~っと明るくなった。「本当ですか?実は、私も貴方にもう一度会えたら良いなって思っていたんです。」と、恥ずかしそうに俯きながら言った。 「では、この楡の木の下で、どうでしょう?」と、和馬は言った。「はい!」と、弥生は顔を上げて言った。 「日時は…どうしようかな?学校と仕事があるから、難しいですよね…。」と、和馬は困った様に言った。 「そうですね…。私の休みに合わせて頂くのは、申し訳ありませんし…。」と、弥生は言った。
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