第二章

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やがて、B―29は通り過ぎて行った。警戒警報も止んだ。和馬は、少しほっとした。町が、爆撃されずに済んだからだ。 そう、弥生逹が暮らす町が…。皆、窓の側から離れた。弥生は、窓から通り過ぎて行くB―29を見ていた。 今日は、何も起こらずに済んだ。だが、明日は分からない。今は、戦時中なのだ。 弥生は、窓から離れると作業に戻った。この日は、何事も無く終わった。 翌日、あの楡の木の下で弥生は和馬を待っていた。時刻は、昼少し前だった。 「早く、来すぎちゃったかな~?」と、弥生は呟いた。暫くすると、白い軍服姿の和馬が見えた。 弥生は、手を振った。和馬も、手を振り返してきた。「今日は、お忙しい中有り難う御座います。」と、言って弥生は頭を下げた。 「いえ。僕なら構いませんよ。それに、お誘いしたのは僕ですから。」と、言って和馬は微笑んだ。 「私の知っている、定食屋さんがあります。造りは古いんですけど、凄く美味しいんですよ!」と、弥生は微笑みながら言った。 「それじゃ、そこに行きましょう!」と、和馬は言った。二人は、並んで歩き出した。 やがて、古びた店に着いた。二人が中に入ると、昼時という事もあってか混んでいた。 中には、兵隊の姿もちらほら見えた。「兵隊さんも、こういう所で食事をするんですね。」と、弥生は言った。 「そうですね。何か無いか、町を見回っている者逹もいますから。」と、和馬は言った。 二人は、側の椅子に腰を降ろした。「何か、お勧めはありますか?」と、和馬は言った。 弥生は、少し考えて「色々ありますけど、私は鯖煮定食が好きです。」と、言った。 「そうですか。それじゃ、僕もそれにしましょう。」と、和馬は言った。弥生は、鯖煮定食を二つ注文した。 やがて、二人の前に定食が運ばれて来た。二人は、食事を始めた。美味しかった。「うん!これは、美味い!」と、和馬は言った。 「お口に合って、良かったです。」と、弥生は微笑んだ。弥生が微笑むと、八重歯がちらりと覗いた。 それが、また可愛らしかった。二人の後からも、次々と客が入って来た。かなり、流行っている店なのだろう。 味の割りに、値段は手頃だった。店の中は、兵隊逹や一般市民で一杯になっていた。
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