第二章

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二人は、食事を済ませ話していた。「煙草を吸っても、良いですか?」と、和馬が言った。「ええ、どうぞ。」と、弥生は言った。和馬は、ポケットから煙草を取り出して火を付けた。 辺りに、紫の煙が漂った。「煙草も、配給制なんですよね?」と、弥生が言った。「ええ。でも、僕達軍人は一般の人逹より優遇されているんですよ。」と、和馬は申し訳無さそうに言った。 「普段は、どんなお食事をされているんですか?」と、弥生が言った。 「軍では、料理は一般兵の仕事なんです。出て来る物は、その時によって違います。野菜の煮付けだったり、たまに肉も出る事があります。」と、和馬は言った。 「私達は、配給品だけで暮らしています。正直に言って、楽ではありません。でも、皆我慢して頑張っています。」と、弥生は言った。 和馬は、改めて軍人である自分が優遇されている事に気が付いた。 宿舎では、たまにだが酒も出る。和馬は、飲めないのでいつも断っていた。 「では、そろそろ行きましょうか?」と、言って和馬は立ち上がった。頷いて、弥生も立ち上がった。 会計は、和馬が済ませた。驚く程、安かった。二人は、店を出て歩き出した。空は晴れていて、暖かい日差しが差していた。 「あの、田之倉さんも出撃なさるのですか?」と、弥生が不安そうに言った。 「そうですね。命令があれば、出撃します。今の所、そんな気配はありませんが。」と、和馬は言った。 「もし、出撃されたら死ぬ事もあるんですよね?」と、言って弥生は俯いた。 「そうですね。でも、僕は死にませんよ!弥生さんの為にも、必ず生きて帰って来ます!」と、和馬は力強く言った。 弥生の顔が、少しほっとした様だった。「私も、田之倉さんの御無事を祈っています。どうか、無事に帰って来て下さい。そして、この戦争を早く終わらせて下さい。」と、弥生は言った。 「もちろんです!早く、この戦争を終わらせなければなりません。それと、僕の事は和馬と呼んで下さい。僕も、貴女を弥生さんと呼びますから。」と、言って和馬は微笑んだ。 「えっ!?でも、そんな失礼な事は出来ませんわ!」と、弥生は慌てた様に言った。 「構いませんよ。さあ、呼んでみて下さい。」と、和馬は言った。
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