約束‐1

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居心地の悪さを感じたボクたちは、目当ての本を持ち逃げるようにレジに向かった。 けど声は結構響いていたらしく、人の後ろを通ったりすれ違う度に探るように見られた。 元々が静かなところだから、悪い意味で目立つんだろう。 どうしてあんなことしちゃったんだ………。 よく考えるとものすごく子供っぽい悪戯だ。 自分のしたことを後悔しつつ、レジに本を置く。 目の前で店員が本をレジに入力し、以上でよろしいですかと訊ねてくる。 若そうな男の人の声だった。 珍しい。 この店の主は初老の男性で、たまに高校生の娘さんがお手伝いしていた気がする。 でも、店長以外の男性がこの店にいるとは知らなかった。 「570円になります」 その声に私は財布から600円を出し、渡そうとして顔を上げる。  
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