目の前と隣の女

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「ねえ、どこを見ているの」   目の前にいる俺の彼女が、眉を八の字に下げて不満気に言った。 ここは飲み屋で俺の隣の席には2人組みのギャルたちが座っていて、 魅力的だったから気になっていた。   なにしゃべっているのかは分からなかったんだけど、 片方の女の子はタバコを指に挟みながら、 あぐらをかくように足をシートに乗せて行儀が悪かった。   「ああ、わりい」   軽い感じで謝った。 彼女が俺の視線の先を追って隣のギャルたちを見て。    「ごめんなさいねえ、かわいくなくって」   と、また不満気に言った。 その数十分後に2人の男が現れたんですが、 そのときには両足をそろえて、汚かった言葉遣いも直ってて、 「キャーキャー、すごぉーい」「素敵ぃー」 と甘えた声を出して、男たちも鼻の下を伸ばしていた。   「ねえ、キャバってやっぱタイヘンなんだ? ……うんたらかんたら」   と、聞こえてきたのでどうやらキャバ嬢だということが分かった。 いやあ、にしても化け方がすごぉーいです。 女っておそろしいなあ……。   「ねえ~、わたしのことどう思ってるの?」   彼女が聞いてきた。   「世界で一番美しい女だよ」   隣に座る、夜の住人を見たせいで、強調して言った。   「えーっ、わたしかわいくないし、喋るの苦手だし、お料理も下手だし……」   それでいいんだよ。 そのほうがいいんだよ。 と、心の中で呟いて酒を呷った。
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