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「あの~…」
前方からのか細い声で、ふと我に返る。
どうやらいつの間にか座りながら眠っていたようだ。
そんなに疲れていないはずなのにな、などと思いながら、声のした方に向く。
そこには、
「あ…」
信じられなかった。
紫織、という少女が、車椅子から真っ直ぐで何の濁りもない瞳で見つめていたのだ。
「やっぱり」
といい、綺麗に微笑む。
表情に綺麗、という単語が合うのかは分からないが、この笑顔には、それがぴったりだった。
しばらくおどおどしていた俺に、
「部屋、来ませんか?」
と笑顔で聞いてくる。
「え…」
「この間のお礼もしたいので。それとも…時間、無いですか?」
「時間は大丈夫だけど…」
「じゃあ決まりですね!」
と言い、方向を変え、ゆっくりと進み出す。
それに合わせ、未だ暴れる心臓を落ち着かせながら、後ろを付いていった。
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