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二人の俺を見る目が、物珍しいものを見てる時みたいな感じで気まずい。
「な、なんだよ?」
だからそう言葉が漏れた訳だ。それを聞いて、恭介は我に帰り、頭を掻きながら口を開く。
「いや、だってよ。なんでお前がナンパで失敗したくらいで凹んでんだろうな? って……」
恭介の横で菊ちんもこくこくと頷く。
そんなに凹んで見えるのか? 俺。
「いや! 全然! 凹んでねえかんな! そういやさ~。歌穂って名前なんだよ。その娘! バッカだな~。俺のこと断るなんてさっ!」
恭介が言ったことを否定したくて、俺はそう言葉を紡いだ。
が、恭介は
「いや、明らかに凹んでんじゃん」
と、空気読めよなー! な発言をしてくる。
「だから凹んでねえつうの!」
そういえば、誰かが言ってたな。ムキになるのは図星だっていう証拠だと。
「ムキになんじゃねえよ」
渇いた笑いを零し、恭介がそう言うと
「なってねえよ!」
って、誰がどう見てもムキになってる俺。
いったいどうしたよ俺! って、自分を見失いつつある中、不意に菊ちんが呟いた言葉は、さらに俺が何を思ってるのか解らなくさせる言葉だった。
「もしかして……恋?」
……恋?
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