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朝、隣でアホみたいな顔で寝ている女を放って身だしなみを整える。
鏡を見るとそこに映っているのはイケメン。うん。マジでイケメンだ。
ナルシスト?
いや違うでしょ。
確かに周りの奴らよりはかっこいいって自覚してるが、鏡で自分に見とれたりはしない。
そもそも、俺がイケメンなのは普遍的な真理! つまり当たり前!
とか、心の中で万歳しながら思ってる俺マジで馬鹿。乙です。
とりあえず、俺は身支度を済ませて、コンビニのバイトへと出かけた。
帰り際、寝てるギャルギャルに
「ごめんね~」
と、謝っておいた。
――――――――
「で? 昨日のおにぎりやらパンはどこに消えた?」
「いやー。硫酸が運びる神秘的な池? にですかな……」
……誤魔化してみる。
「毎日……廃棄の商品は食うなと叱っているよな?」
「だ、だって……」
腹減ったんだもの……
「だってじゃねえ! 次また同じことしやがったらクビだクビ!」
「はい……」
何回言われたっけ? 忘れた。とりあえず、何度も叱る度に言ってるから、大丈夫でしょう。
バイトの先輩角田泰弘(かくた やすひろ)さんは、怒ると恐いが、基本は面倒見がいい頼れるおっさ――先輩だ。
「角田先輩。腹減ったっす」
「あ? 知らねえよ」
「いやあ、自分所持金736円なんっすよ。これであと給料日まで一週間なんて……耐えられますかね?」
「ふんっ。賞味期限切れの物でも食っとけ」
店長にバレたらクビだな。それでもこのおっさ――先輩は、なんだかんだで優しいから好きだ。
BLとかじゃないぞ?
いや、念のためな?
これはあくまでも、男と女の恋物語~。……好きな女とかいねえけど。
まあ、とりあえず。角田のおっさ――先輩は、東京では結構珍しいお節介な温かい人物つうことだ。
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