第三話

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僕の部屋に住んでいる猫は言葉を喋る。 何故喋る事が出来るのか尋ねた所、帰ってきた台詞は「言葉なんて誰でも話す事が出来るさ。他の猫どもは練習をしないからな」との事だった。 「実際彼らの会話は聞いてて嘆かわしくなるね。全てにゃーのニュアンスだけで会話するんだから」 猫はかぶりを振りながら近代の猫社会を嘆いた。 猫社会の会話は全て「にゃー」の発音のみによって交わされ、意味はその発音のニュアンスによって表されると言うのだ。これでは高度な会話は不可能だ。 「まあ、彼らの会話はにゃーで事が足りる程度の内容だからな。彼らは学が無いからそれ以上の会話を思い付きもしないのさ」この調子では、よく漫画等で見る動物の言葉を理解するなんて事は無理どころか、無駄なようだ。 さらに猫は続ける。「俺に彼らの会話の翻訳を頼もうったって、知るだけ無駄だぜ。彼らがにゃーって言ったら、その意味はつまり、にゃーなのさ。大体、彼らは自分が手洗いで用をたした後に砂をかける理由すら解ってないんだ」 「君は知ってるのかい?」 僕の問いに猫は得意気に答えた。 「ああ、知ってるとも。それは、本能だからさ」
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