第四話

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夕方、扇風機のぬるい風を受けビールを飲みながらプロ野球中継を観るのが僕の人生におけるささやかな幸福だ。 そんな幸福な僕に虎模様の猫がつまみの刺身のサイズと人間と猫の人生における消費カロリーについて偉大な抗議を繰り広げている。 「野球なんて退屈なスポーツ観るのやめようぜ。サッカーの方がリアルタイムな展開で面白いって」 刺身の次はプロ野球がぺらぺら喋る猫の魔の手にさらされている。 僕は可能な限りの威厳を込めて言った。 「僕は野球が観たいんだ。そんなにサッカーがいいなら猫の仲間でも集めてサッカーをやればいいじゃないか」 猫の言い分は「冗談はよしてくれ。全ての会話がにゃーで済むようなやつら相手にサッカーのルールを説明しても無駄だね」猫は続ける。「猫どもにサッカーのルールを説明するのは蟻に民主主義を説くのと似てるな。賢明にして親愛なるありんこ諸君、今こそ女王の圧政を打倒し、自由と平等を手にするのだ!そしてその巣には誰もいなくなるのさ」 猫の妄想は別にいい。しかしプロ野球中継の邪魔にならない程度にしてほしい物だ。 無視を決め込む僕に猫はこう言った。 「おや?俺のレベルの低い講義は博識な人間のあんたにはつまらないかい?じゃあ、話を三次元的に広げよう。聡明にして親愛なるミツバチの諸君…」 猫の妄想のせいで現実のプロ野球に集中できない。僕は言った。 「ナンセンスな話はやめてくれ」 猫の答えはこうだ。 「ナンセンス?たしかにこんな言葉で呼び掛けてもミツバチには相手にされないかもな。じゃあ、こう呼び掛ける事にしよう。やあ、ハニーたち!」
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