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「ぅわっ。寒っ」
会社から出た瞬間、冷たい風が体に凍みた。
急に寒くなり始めた12月の始め、昼間は暖かかったせいで防寒対策をしてなかった俺は足早に家路についた。
家に向かい歩いてると普段から見慣れた並木道がクリスマスを祝うようにイルミネーションで彩られ、街からはChristmas songが流れてる。
「もう、そんな時期か…?」
1人ぽつりと呟き、また歩きだそうとした時、
「テル」
一瞬、胸が高鳴った。
懐かしい呼び名。昔、俺の事をそう呼ぶ人に俺は初恋をした。
そっと振り向くと、そこには恋人達が仲良く話してる姿が目に入った。
「んなわけないよな。」
また、並木道を歩き出した俺は妙に切なくなりタバコに火をつける。
あれから10年。あの頃は楽しかったと思う程、俺はすっかり大人になってしまったらしい。
『テル』
この名を聞いたせいなのか俺はふと、ある場所に行ってみたくなった。
寒さをどうにかする為にコンビニに入り、ホットコーヒーとカイロを買って懐に忍ばせた。
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