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「"marionette"の任務、終わったの?
お疲れ様。」
「有難う御座います。」
愛想笑いと一緒に礼を言う。
愛想笑いだと向こうは気付かないけどね。
誰だろう。顔は見たことある。でも名前までは覚えてない。
昔から愛想笑いには慣れていた。
人に心の中を見せる訳には行かない。
俺はいつから此処に居るのだろう。
もう覚えていない。
唯一覚えているのは涙を零さないように笑っている女の人と俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す男の人の朧気な顔。
多分両親なのだろう。
何故俺を捨てたのか、とかそんな疑問は何故か浮かばない。
この生活に俺自身が満足しているからなのだろうか。
腐る程口座に振り込まれる金と、約束された衣食住。
何処に不満が出るだろう。
…何故かそんな事を思いながら任務遂行の報告をしに、無駄に長い漆黒の室長室へと続く廊下で俺は歩みを進めていた。
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